革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

革製品を特徴付ける3要素

革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

名刺入れだけでなく財布、バッグ、ベルト…etc
わたしたちは意外と日ごろから革を使っています。

私たちの遠い祖先がマンモスを追いかけていた頃から革を使っていたわけですから、人類が最も親しんできた素材のひとつです。
何十万年もかけて革の加工技術は生み出されてきたというわけです。

中でも革の特性を大きく特徴付けるのは、
「素材(どの動物か)」「なめし」「仕上げ」の3つです。

この3要素は名刺入れのみならず全ての革製品に共通していますから、革製品を選んだり使ったりするときに参考にしてみて下さい。

素材

革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

想像に難くないと思いますが、どの動物の皮を使っているかで同じ設計でつくっても全然違うものになります。
今回は名刺入れや財布などの革小物に使われるものに絞ってpick upしました。

牛革(カウレザー)

一番ポピュラーな素材です。
ざっくりといえば、国内の革製品の50%程度は牛革です。

銀面が滑らかで丈夫とかいろんな組織が均一だとかちゃんと理由はあります。
牛革は牛の成長段階によって呼び名が変わり、特徴が変わっていきます。
中でも、カーフとステアを紹介しておきます。

カーフ(ハイブランドによく使われる高級皮革)

カーフは生後半年以内の牛の赤ちゃんの皮の事です。きめが細かくて手触りがよく、しっとりした見栄え、柔らかさが特徴。
人間でも赤ちゃんのお肌を想像してもらうと判りやすいと思います。

カーフはボッテガとかエルメスみたいなハイブランドでだいたい使われています。
ハイブランドでよく使われるものです。
基本的に高級皮革の部類に入って値段も高いです。

カーフといっても南アジアで作られるバッファローカーフ(水牛)ならカーフの中でもややお手ごろです。
少しつるっとしていて光沢があります。

ステア(一番流通している)

肉牛用に飼育されている去勢された牛の皮です。
流通量も最も多い。

ちなみにカーフもそうですが、皮をとっている牛や豚、羊などの動物の肉は食用として流通しているらしいですよ。

皮を剥がれるために殺してそれ以外は廃棄、みたいなひどいことは基本的にやっていないみたいです。
むしろ、普段わたしたちが食べる肉を取った牛の皮を使って革製品を作っている、という具合なんですね。よかった。

ヤギ革(ゴートレザー)

オーソドックスに流通するヤギ革は牛革と比べると少し光沢感が強く、パリッと乾燥してややゴツい感じです。
銀面が牛革と比べて厚めで張りがあるかららしいです。
あと、ちょっぴり軽いです。

昔は安かったんですが、革の職人さんに聞いていると今は牛革より高いらしいです。

銀面が厚いのもあってか型押しがキレイに入ります。
キッドという牛革でいうところのカーフの様な子羊の皮もありますが、あまり見かけません。

羊革(シープレザー)

すべすべな手触りとふわふわの柔らかさ、軽さが特徴の羊革。
体が小さいので歩留まりとか流通量の都合で少し高いです。

羊の革も名刺入れなら使われます。
財布や小銭入れの様な少し形が複雑になるものには柔らかすぎてやや難しい。
と工場の職人に言われます。

「シープでトートバッグとかいいと思いますよ!」
と革の職人によく提案されています。

羊革の柔らかさ、手触り軽さが活かせるからだそうです。
柔らかすぎて型押しは入りにくいそうです。

ちなみに毛が付いたままの物はムートンと呼ばれ、ふとんや服に使われます。
ラムは牛でいうところのカーフにあたる子羊の皮です。

馬革(ホースレザー)

ポニー

細かいシボ感とやわらかさが特徴で名刺入れに使うと「フタ」にあたるところが開きにくく使いやすいと思います。

実際には馬革のおなかのホースフロントといわれるところの皮が使われているものをポニー革としているところもあって、だいたいがポニーの革ではないです。

コードバン

高級皮革として名高いので耳にしたこともあるかもしれないコードバン。
その輝きからdiamond of leatherとも言われます。
見た目のカッコよさもありますが、高いだけの理由があります。

そもそも、一部の農耕馬のお尻の一部分からしか取れない希少な部位です。
後で説明するなめしの過程に1ヵ月かかる事も希少性の要因です。

ふつうの名刺入れを作ってもコードバンだと10,000円を超えてきます。

名前の由来は複数ありますが、イスラム教徒がイベリア半島を支配していた時代(8~15世紀くらい)に現スペインのコルドバの特産品だったためその名残でコードバンと呼ばれている。という説が個人的には気に入っています。

※中世ではアラブ人の革の加工技術が群を抜いて高かったらしいです。

番外編

床革(スプリットレザー)

スプリットレザー(床革)と聞いた事はありませんか?
革の第二層(銀面の下)の上に樹脂を塗ったものです。

少々硬いのが特徴です。

ただ、表面は樹脂なので「革」というよりも「合皮」に近い性質です。
レザーという名前はついていますが水気にはいくらか強いですし、熱は苦手であったり、耐久性がやや低かったりするので、選ぶ際は合皮の特性を把握した上でえらびましょう。

鞣し(なめし) ~皮(Skin)から革(Leather)へと変身させる加工

革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

この記事内では「かわ」と読む「皮」、「革」2文字をさりげなく使い分けていたんですが気付いていました?

皮は動物の表皮、人間で言うところの皮膚、それを加工して素材として利用可能にしたものが革です。
鞣し、読んで字のごとく、柔らかい革を作る作業です。

動物の皮に薬品を染込ませたり、揉んだりたたいたり引っ張ったりして腐らないようにしたり、柔らかくしたりするのが目的です。
細かい話をするとコラーゲン繊維がくっつかないようにしてやわらかさをキープしているという事です。

そんな鞣しの手法は複数ありますが、2つのメインストリームがあります。
使う鞣し剤も作業工程も異なるので革の具合も変わってきます。

クロムなめし

現在流通している革製品の大多数がこの手法をとっています。
なめしにかかる時間やなめし剤等のコスト面から量産に向いているという側面が一番大きいでしょう。

大きな洗濯機みたいなところに皮をなめし剤をいれて1日くらいグルグル回してなめします。
1ヶ月は余裕でかかってしまうタンニンなめしと比べると生産性が非常に高いという事です。

クロムなめしでなめした革はやわらかくて耐久性、耐熱性が高くなる。
また、染色の発色がいいことも特徴になっている。
なんだか弱点無しの完璧手法みたいですね。

ちなみに、クロムの化合物がなめし剤になっていて、クロムが皮のコラーゲン繊維とうまく結合するのでこんな特徴がでます。
200年くらい前に開発されたみたいですが、産業革命後の西欧の工業化の中で生まれてきた手法みたいです。

クロムなめしは、それだけ革新的な技術だったのかも知れませんが、私としては人工知能まで生み出し始める程にテクノロジーが進歩しているのに新たな手法が出てこないのは不思議な感じです……

タンニンなめし

植物由来のタンニンという成分をつかっているなめし方です。
タンニンなめしでなめされた革は徐々に型がついていって変形していったり、色がだんだんと深みを増していく経年変化していくという特徴があります。

また、タンニンなめしの革は張りがあって「芯」の様なものがある硬めな仕上がりです。
使っていくうちに使い手に馴染んだ形になっていき、色味も深くなっていくのでこれを「育てる」と形容して楽しむ人も多いです。

最近の有名どころでは栃木レザーなどがこれにあたります。
革好きの人に愛されているのはなめしの過程でとっても手間がかかってできているという生産背景もあると思います。

濃度の違う鞣し液に何回もつけて行ってなめし終わるのにものによっては何ヶ月もかかります。

私には革好きの知人がいるのですが、
「われわれ人間のように手間ひまかけてタンナーに育てられてきた革を引き継いで育てていくというような過程に愛着がわいてくる」
と革製品を嬉しそうに使っています。

仕上げ

革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

簡単に言うと革の見た目を作る工程です。
外見に直接の影響を与えるところですから革製品を使っていく中で一番気になるところかも知れません。

これも枚挙に暇がありませんから知ってほしいごく一部をpick upしました。

ヌメ

タンニンで鞣したあとに何もしない革の事。
要は仕上げなしです。
タンニンの色もあってか肌色です。

最も天然の状態に近い革で、革好きの人には大変好まれます。
私自身も革製品を企画する際に、天然素材としての革の味わいも楽しんで欲しいときはヌメ革を必ず使います。

エンボス

革の表面にプレスをして模様をつけたものです。
ヤギ革にクロコ柄を型押ししたものやルイヴィトンのタイガの様に格子状の型押しを施したもの、エピの様に水紋のような型押しをしたものなど種類が豊富です。

型押しすることによって、革にあった生前の傷跡なども消えたり、独特のラグジュアリーな光沢感が出たりします。
また、経年変化が起こりにくいので買ったその時の状態に近いまま長く使えます。

シュリンク

薬品を染込ませたり、加熱して表面にシボを出す手法です。

shrink(縮める)の名の通り薬や熱によって繊維を縮めることで出来ています。
革の密度や繊維の方向によってシボのつき方が異なるのでオンリーワンの仕上がりになります。

オイル

革にオイルを染込ませた仕上げです。
艶感がでてきてしっとりとした仕上がりになります。

また、オイルを染込ませることで耐水性が高まり、革がしなやかになります。
新品の野球のグローブはオイルを塗って早くやわらかくなる様にするので、野球経験者はピンと来ると思います。

また、使用していく中で摩擦などを受けるとツヤが増していくので経年変化を楽し婿ともできます。

さいごに

革の種類で選ぶ名刺入れ、解説とおすすめの商品を一挙紹介

人類の生活に寄り添ってきた革製品、何十万年という革との付き合いの中で多種多様な革や製法、なめし、仕上げが生み出されてきています。

でも、パッとみて手にとって気に入ったものを使ってもらえれば基本的には全く問題ありません。

革製品を作っている身として、革製品を使う上でたった1点だけは思い出してもらえたらな。とおもいます。

「経年変化をするものか」という観点です。
経年変化しようがしまいが両者に優劣はありません。

ただ、耐水性や耐熱性、耐久性に違いが出てきます。

名刺入れや財布として使うならどちらでも問題はありませんが、ベルト、靴などを選ぶときには両者の簡単な性質の違いを思い出してもらえると、いい革製品選びになると思います。

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